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【令和6年度】昨今のNvidia社製品に対する強いニーズ、国産レガシー半導体利用に関する将来性とそれに対するAI産業の大きな潮流に対する方向性について。

GPU市場におけるNvidia一強となった背景とそれに伴う他者の状況

1.Nvidia社の企業情報

2.Nvidia製品に搭載される専用ソフトウェアCudaの強み

3.Googleが提供されるTPUプロセッサとそれに伴うソフトウェアエンジニアから発表されたtensorライブラリについて

国産レガシー半導体の世界シェアとそれを取り巻く周囲の環境

1.国産レガシー半導体について

2.それを取り巻く周囲の環境

AI時代における日本の活路と商業化における目指すべき方向性

1.目先ではなく、将来の顧客ニーズを予測することの重要性

2.国内企業がAI商業化を進めるにあたって今後5年~10年の間、重要なピースは「技術ではなく、その技術を活用できる環境構築」

1.Nvidia社の企業情報

Nvidiaは、主にGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の開発で知られるアメリカのテクノロジー企業です。1993年にジェンスン・ファン(Jensen Huang)、クリス・マラコフスキー(Chris Malachowsky)、カーティス・プリーム(Curtis Priem)によって設立されました。Nvidiaは、もともと3Dグラフィックスの処理能力に特化した製品を提供しており、ゲーム業界や映像処理において大きな影響を与えました。

利用領域

利用料域は主に

  • GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)
  • AI(人工知能)とデータセンター
  • 自動運転技術
  • メタバース

業績と規模

Nvidiaは、世界中で数十億ドル規模の売上を誇り、特にAIやデータセンター事業の成長が著しいです。2020年代に入り、半導体市場においてもリーダー的な存在感を発揮し、2023年には株価が大きく上昇しました。市場価値は5000億ドルを超え、世界で最も価値のあるテクノロジー企業の一つとなっています。

これらを見るとNVIDIAの強みは「GPUを取り巻く技術」にあると思うように感じますが

「GPUを取り巻く技術」はvidiaの強みのごく一部でしかありません。 本当の強みはCUDA中心としたAIコミュニティーにあります。

2.Nvidia製品に搭載される専用ソフトウェアCudaの強み

CUDAとは

NvidiaのCUDA(Compute Unified Device Architecture)は、Nvidiaが開発した並列コンピューティングプラットフォームおよびプログラミングモデルです。主に、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を汎用計算に利用するための技術として提供されています

CUDAの主な特徴 CUDAは、GPUの持つ膨大なコア(処理ユニット)を使って、CPUでは時間がかかる大量の計算を高速に処理します。これにより、従来のCPUのみを用いた計算よりもはるかに高速な処理が可能となります。TensorFlowPyTorchなどのAIフレームワークも、CUDAに対応に対応することでGPUによる高速な計算が行われます。

CUDAコミュニティーが発足されたのは、CUDAが発表された2006年頃から形成され始めました。Nvidiaは同年にCUDAをリリースし、プログラマーがGPUの並列計算能力を活用して、科学技術計算やAIなどの分野でパフォーマンスを向上させるためのプラットフォームを提供しました。これにより、開発者や研究者がCUDAを使って大規模な計算問題を解決するために集まり、徐々にCUDAコミュニティが発展していきました。

コミュニティーが成長するにつれ、研究やAIなど多くの分野でNvidia製品が利用されることで、分野を跨ぐノウハウが蓄積されていきました。また、CUDAはNvidia製品の上でしか稼働しません。 「2006年から築き上げたCUDAコミュニティーという強固な基盤」と、「CUDAはNvidia製品にしか利用できないといった」二つの要因がNvidia製品の売り上げを強固にしてきました。

3.Googleが提供されるTPUプロセッサとそれに伴うソフトウェアエンジニアから発表されたtensorライブラリについて

これらの状況を打破すべく、Googleを始めとした企業は独自のAIプロセッサの開発に取り組んでいます。それもそのはず、Nvidiaの粗利率は驚異の80%。新しいGPUが発売されるたび、GPUを利用したクラウドサーバーサービスを提供しているGoogleはそこに投資せざる負えません。その結果、財布の負担が大きくなり、独自のAIプロセッサの開発に取り組んでいます。

Googleが提供するAIプロセッサとは Googleが提供するTPU(Tensor Processing Unit)は、Googleが独自に開発したAIおよび機械学習用の専用アクセラレータです。主にGoogleが提供する機械学習ライブラリであるTensorFlowを最適化するために設計されました。

特徴としては、

  • AI向けに最適化
  • クラウド環境で提供
  • 複数世代のTPU
  • 低消費電力

といった強みがあります。

ここで一度、AIの社会実装に立ち返ってみましょう。当然のように、**「アナログデータ→デジタルデータ→AIに推論をさせる→推論したデータを利活用」**といったプロセスが必要になってます。 具体的に言うと、 「カメラで撮影→デジタルデータに変換(映像データMP4)→AIに推論→数値データを使って、何かしらのアクションを取る」 これらの流れの中で、クラウドで推論させる場合、「カメラで撮影→デジタルデータに変換→クラウドに送信→クラウドAIに推論→数値データを使って、何かしらのアクションを取る」

といったことが必要になってきます。 つまり、クラウドに送信する過程で不必要で莫大なデータを送信することになり、通信費用含め推論コストが増加することになってしまいます。 クラウドで処理する場合の多額の推論コストはAIベンダーや、AIを利用するユーザーにのしかかってきます。

それを避けるため、製造業を中心としたDXやセキュリティ関係ではEdgeAIを使ったIoTデバイスで推論を行い、必要なデータのみをクラウドに送信する流れが2016年ごろを筆頭に徐々に広まり続け2022年ごろにCOVID-19パンデミックにより、リアルタイムデータ処理やリモート操作の重要性が増し、Edge AIの採用が加速しました。

TPUプロセッサはクラウドをベースに設計され、コミュニティー全体でクラウドでの利用を推奨していましたが、AI業界全体のEdgeAI、IoTでの処理に流れ、Googleは収益のほとんどが広告を占めており、「EageAIに多額の予算を割けないという経営判断から舵取りが遅れ」Nvidiaの後手になっています。 一応Coral dev boardというエッジAI向けのTPU(Tensor Processing Unit)を搭載した小型のコンピュータボードで、エッジデバイスでの機械学習推論を高速化するために設計されているデバイスを販売していますが、アップデートが遅く、ニーズに合わせた設計ができていないことから販売台数は低迷しています。

国産レガシー半導体の世界シェアとそれを取り巻く周囲の環境

1.国産レガシー半導体について

昨今台湾のTSMCで製造されているA18 プロセスノード3nmプロセスの半導体はiphone16に搭載されています。iphoneのようなデバイスを始めとしたデバイスの部品としてつかわれることで、巨大な需要を作り出し、世間の注目を大きく集めています。国内では半導体製造のシェアは30%、材料では50%を握っており、千歳のLapidasで生産される予定の2nmプロセスノード最先端半導体も注目されています。

世間は最先端半導体を注目する中、必要とされているのは最先端半導体のみなのかというと、実態はそうではありません。レガシー半導体といわれる、車載など特定の用途に活用される半導体も大きなニーズを持っており、国内の製造Fabは250ほどありますが、その中のほとんどは、レガシー半導体の製造を行っています。

2.それを取り巻く周囲の環境

多くのIoT製品は、ユーザーの様々な要望に応えるため、半導体一つに多くの機能を加えた汎用ICというものを利用してきます。

半導体は 開発:「設計、フォトマスク作成」  製造:「前工程、後工程」と大きく分けることができます。 これらのうちの「開発」コストが大部分を占めています。 この開発コストは最先端のロジックだと、数百億円かかるといわれています。EDAツールは、安くても年間2000万円かかります。 また、iPhoneでいえば、1cm四方に数百億のトランジスタを載せる回路設計をおこなったものをEDAツールを使い検証行っています。

それに加え、フォトマスクの作成にもコストがかかります。 それらが積み重なり、半導体の開発に数百億かかる原因と言われています。 数百億かかるものをユーザーに届くようにするためには、一個数千円で作る必要があるので、結果的に多くのニーズにこたえる電力効率が悪い汎用ICを半導体デバイスメーカーは設計しているといった実態があります。

それに加えて汎用ICがゆえに様々な用途に対応させるため、処理が煩雑になり、消費電力が増えています。バッテリーで駆動させるほうが、効率的なケースでも電力消費量が多いがゆえに対応できないといった状況が生まれています。 そのためレガシー半導体の製造プロセスを工夫し、特定の用途に対して冗長性を持たせる設計をすることで、特定の機能に特化し、コストを抑えた半導体「カスタムIC」の製造を進めようとしている企業があります。
そんな中カスタムICの製造を進めようとしている国内企業はあるのですが、ここではその説明は割愛させていただきます。

AI時代における日本の活路と商業化における目指すべき方向性

1.目先ではなく、将来の顧客ニーズを予測することの重要性

日本は基礎技術や基礎研究など一般ユーザーに届くまでのサプライチェーンに強みを持っています。

前述のとおり、世界における日本の半導体製造シェアは30%、材料では50%を握っており、これらにより経済安全保障上日本の立ち位置を押し上げています。

一方、一般ユーザーに届く製品の商業化には苦戦しています。 その要因には、「参入障壁の分散化」と「将来の顧客ニーズに関する理解」が関係していると考えられます。

参入障壁の分散化 サービス・プロダクトを作るうえで、最大の参入障壁は、技術であると考えるIT起業家は多いですが。

実際、1990年代後半から2000年代初頭にかけて発生したITバブルの最中製作されたプロダクトのほとんどは生き残っておらず、会社として存続していても、取扱う商品は全く違うものというケースが多いです。 こういった状況が生まれている原因のひとつに「業界の特徴、構造」があると思います。 「IT(Information Technology)」は、日本語で「情報技術」を指します。ITは、コンピューターやネットワーク、データベース、ソフトウェア、ハードウェアなどを使用して情報の処理、保管、伝達を行う技術のことです。 これらの産業発展に大きく寄与したものの一つに「インターネット」があります。 「インターネット(Internet)」という言葉の語源は、英語の「inter(相互に)」と「network(ネットワーク)」を組み合わせたものでが、語源のとおり、相互に接続されたネットワークにより、情報の速度は加速し、今までにない速度で産業が発展してきました。

つまり、1990年代から情報の価値というのは、インターネットを通して急激に落ちてしまう現象が起こっているのです。 いままでの当たり前が、翌年には当たり前ではなくなり、古い技術となってしまうということが往々にして起きてしまいます。

そんな刹那的時代に、国を支える一大産業を創るためには、技術に固執せず、将来のニーズを予想し、いち早くリリースする。そして、使っていただく。スイッチングコストを高め、独占的にサービスを利用してもらい、出た利益を技術投資に惜しみなく使うことで後続の企業の追従を許さないことが、重要だと考えます。

NvidiaがGPUを世にリリースした当時、GPUはグラフィックゲーム専用の外付けデバイスでした。 ニッチなニーズを取り込みながら成長していましたが、AIブームが来ることで、爆発的な成長を遂げました。 この爆発的な成長に寄与したのは、 前述のとおり「2006年から築き上げたCUDAコミュニティーという強固な基盤」と、「CUDAはNvidia製品にしか利用できないといった」二つの要因です。 つまり、技術だけが参入障壁になったのではなく、それを取り巻く環境を味方にしたという要素が強いと思います

GoogleはGoogle Adwordsといわれる検索連動型の広告が主な収入源でした。 それに伴い、当時Googleは巨大なデータセンターを必要としたのですが、特段特別な技術は使わず、小規模なPC使い大量に並べ、一ユーザーの検索結果をPC一つで回答させる力業を使い、他社と異なり検索速度を高めることで差別化をしていました。

技術ではなく、ユーザーのニーズをいちばんに考えることで、誰よりも先に顧客を獲得し、地位を確固たるものにしたというのが、彼らの凄みだと思います。 当時インターネットが今のような規模で普及していれば、その手法を多くの会社がパクることができたと思いますが、Googleは誰よりも早く社会実装し、ネットユーザーを囲い込んだことで、地位を高めていきました。

これらのことから、国内企業がAI商業化を進めるにあたって今後5年~10年の間、重要なピースは「技術単体ではなく、その技術を活用できる将来のユーザーファーストの環境構築」と私は考えています。